マユル「――――勇者か?」
一見したら、すぐにそう思える風貌をしていた。
しかし、それに疑問符を打ちたくなるようなものを付けていた。
レッドフレームのサングラス。
ワインレッドのカッターシャツの影響もあり、かなり極悪イメージがする。
勇者と呼ばれたいのであれば、100人が外したほうがいいといわれるサングラスであった。
そして、このような人間がやってくるとは――――。
マユルは驚愕しかけて――――すぐに納得した。
来るべき脅威とはこういうことかと。
なるほど。
これが例のカレン・エスタークという人物か。
竜王の血を飲みしマユルー・パーチェノークが本気をだしても勝てるかどうかわからない相手であった。
カレン「そういうお前は……魔王……なわけはないか。……どちらかというと竜王か?」
ただ驚きの大きさから言えば、マユルよりもカレンの方が上であった。
カレン・エスタークの常識からは明らかに逸したものが登場したからである。
――――――どこからどう見ても竜である。
マユルが搭乗しているものは明らかに100人が100人竜と断言できるものであった。
この時代――――竜は滅んでいる。
正確には300年前に根絶やしにしたはずの竜がカレンの目の前にいた。
それをいとも簡単に制している少年がいる。
この状況は明らかに異常である。
カレン・エスタークは竜を見たことがなかった。
おとぎ話や昔話は腐るほど聞いたことがある竜の存在。
それはいつだって、「勇者」と呼ばれる存在が倒して終わり……どこにでも話だ。
そんな幻想だけの存在が今、目の前にいるのである。
誰であろうとも驚くべき事象であった。
カレン「しかも―――――どう見ても歓迎ムードではなさそうだなあ。」
カレンは巨大な剣を構えた。
聖剣グラストと呼ばれる巨大な剣を天高く掲げた。
グッゲンハイム起こした精霊の魂が埋め込まれているという伝承を持つ大剣。
製造年代はグッゲンハイムが発生した時期と同じであるため、様々な伝承をもつ剣である。
そのため、その伝承の真偽は全くの不明。
伝承通りの魔力が埋め込まれていて、グラストを操るものは世界を制すと言われている程の力がある。
切れ味・耐久性・中に埋め込まれている魔力どれをとっても世界で最高レベルを誇る。
それは――――――紛うことなき勇者のシンボルであった
古来から勇者が聖剣を持ち、悪を絶つ。
おとぎ話で称される話の剣がそこにあった。
竜を操る少年を見ればわかる。
かなりの殺気を感じた。少年と言うことは除外していい。
カレンはそう断じた。
明らかに目が人間のソレとは違う。
凍るような目つきをしている。このような目つきをしている者が人間であるはずがない。
溢れる光の粒子が散布される。
聖剣グラストから溢れる魔力の粒子であった。
マユル「―――――敵?」
カレン「さあな。」
本来、カレン・エスタークは魔王と呼ばれる存在に会いにきたのである。
そのためにかなりのリスクを背負って、ここまでやってきた。
その理由は、その方が戦闘が多くて楽しそうだからという単純な理由。
そして、好奇心。
もし、魔王が噂どおりの博愛主義ならば、まあそのときは話をしてみようかと思った。
つまるところ、カレンにとっては遊びに来ただけである。
そこにシュライン国家とクロノス自治区の緊迫した状況は全く関係なかった。
来たいから来ただけである。
カレン「我はカレン・エスターク。
グッゲンハイム大陸を支配する北の帝国デュミナスの勇者である。
勇者は悪をねつ造してそれを根絶やしにする虐殺者なり。
その姿――――絢爛(けんらん)にして荘厳なり。
私は―――――人間の平和を守るためだったら―――――
竜王だって、魔王だって殺してみせる。」
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