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2013/01/03 (Thu) 6話

仕事絵空(夕方)


アンリ
「……私がクロノス自治区に住み始めたのは12年前のことだ。
 そのころはまだクロノス自治区とも呼ばれてなかったが。
 まだ10歳の私は、クロノス自治区国境のシュライン国家に住んでいた。
 迫害されながらもなんとか暮らしているような状態ではあったけれど」




今でも。
そういうことは良くある。
・・・という話である。
エルフはエルフで社会とは断絶して集落を作っている。
それはどこの人間の街でも同じである。
今までずっといた土地を離れたくない。
・・・というのはどこにでもある。
それを一定認めている。
それは国際条約でも認められていることである。
エルフがシュライン国家などの土地に住むこと自体は推奨されている。
それがこの国際ルールとなっている。
それを破ることがあれば・・・・。
あまり国際上立場的によくない風評が付いて回ることになる。
そのことを避けて、認めている。
・・・というのがある。
デュミナス帝国でもエルフなどが住むことは認められている。
ある程度であるが。
それでも、エルフが政治家になることはないし。
上役になったという話も聞かない。
迫害というわけではないが。
それでも、冷たくされるのは変わらない。
それが人間の国家の風潮である。





アンリ
「けれど、段々と迫害は酷くなってね。子供の私まで殺されそうになることもある。
 ・・・・・・・・・だから、家族は私だけでも逃そうとしたんだ。」

シオン
「逃がそうって……そんな簡単にできるものなの?」

アンリ
「まぁ、簡単なことではないけれど。国境沿いってこともあったからね。
 両親はクロノス自治区にすがって、私をホルンの森に逃がした・・・というわけだ。」


住居がそう森から遠くなかったからできたことでもあるけれど.。
なんとか森に入るのはそう難しいことではなかったのだと、アンリは言う。
その言葉に、シオンが小さく首を傾げた。
実際に、そうである。
あの場所は昔から戦場になっていた。
そのため、警備もかなり厳しい。
ほっといても死ぬ。
そのような状況である。
そんな状況の場所に置くというのは。
やはり自殺行為なのか。
あるいは賭けなのか。
それに近いことには間違いない。



今でも、乱暴件数1000件以上。
一日3件以上、あそこで乱暴事件が起こっている。
そのため、危険地域であることは誰もが知っている。
住民であれば。
だが、そういうところに置かなければいけないほど。
アンリの両親はそれほど切羽詰まっていた。
・・・ということなのだろう。
それは今のアンリであれば想像しやすいことである。





シオン
「酷い……」

アンリ
「そうかもしれない。だけど、あのままあの場所にいて。
 死ぬのを待つ方が私は怖かった。」



その言葉にシオンがはっと顔を上げる。
その顔には苦悩がありありと張り付いていた。
そして、迷うように口を開いて。
けれど何も言えず唇を噛んだ。
アンリはそれを見て少し目を細めたが・・・・。
それについては何も言わず、やがて続きを話し始めた。





アンリ
「ひとり森に逃がされたは良かったが、あそこは広いし暗くてね。
 私はただひたすら歩き続けた。本当にあるのか分からない土地を目指して。
 もしかしたら本当にあるのかもしれない、なんて少し希望を持った。けれど……。
 やはり子供だったんだろうね。途中でばったり倒れてしまったんだ。」



流石に。
あの場所を子どもが歩くというのはかなり大変である。
モンスターもいるので、それを撃退しないといけない。
相当なつわものでないとあそこは通らない。
それぐらいにかなり大変である。
軍人でも集団で、計画的に通らないといけない。
それぐらいに難しい森であるのは間違いない。
女性一人。
男性一人。
モンスター。
国境沿いの戦場地域。
それらを鑑みれば、ここを子ども一人で通ることは殺すことを意味する。
それぐらいにまずい場所である。
力試し。
・・・と言っても、倒される。
それぐらいの自然の地域である。
あの森は相当な危険地域であることは誰でも知っているレベルである。







それでも、なんとか生き残れたというのは。
・・・・奇跡なのか。
神の采配なのか。
何らかの力が働いたのか。
・・・なんにしても、アンリは生きている。
それは事実としてある。




アンリ
「本当に偶然だったんだろうけれど、クロン様が倒れていた私を助けてくれたんだ。
 助けられたことには変わりないからね。すごく嬉しかったんだ」

シオン
「へぇ、良かったわね」

アンリ
「本当に。本当にあの人には頭が上がらない。あの時、クロン様も13歳なんだがね。
 年齢はそこまで私と変わらない。だから。命を懸けて、あの人の恩に報いたい。」



本当に嬉しそうにアンリは言う。
シオンがだんだんとアンリの表情が読みとれるようになってきたのもあるのだろうが。
それにしても今の彼の表情は雄弁だった。
まだまだ、いろんな表情をアンリは持っているのかもしれない。
そんなことを思う。
もしかしたら、シオンが気づいていなかっただけで、昨日も。





覚悟と深い恩と。
万感の思いのこもった言葉にシオンは思う。
彼は感情を持っていないわけではない。
ただ、それが上手く出せないだけ。
実際にシオンは少しずつだけれど。
アンリの表情が分かるようになってきている。
分かろうとするか、しないか。
それだけが彼の感情を知るきっかけになるのかもしれない。

シオン
「大丈夫よ、あなたなら守れるわ」

アンリ
「・・・・・・そうだね。じゃあ、帰ろうか。」







道を進む。
辺りはもう暗く、星が天を飾り付けていた。
今夜は月が綺麗だ。
夕方に点在していた雲が、おぼろに光を受けて白く浮かびあがっている。
隣に並ぶ肩にシオンはちょっとだけ嬉しくなる。
闇に溶けるようなダークスーツの背中は、シオンよりずっと広い。
その背は少しだけ寂しそうで。
彼がこれまで積み重ねてきた孤独を感じさせた。
家族がいないというのは。
どんな気持ちなのだろう。
シオンは記憶がないから、家族がどんなものなのか分からない。
なくした、という感覚すら喪失している。
だから寂しいとは思わない。
ただ自分の存在を心許なく感じるくらいだ。
シオンをシオンだと認めてくれる相手がいない。
それは少し不安だ。
だけど、寂しくはない。
最初は気に食わなかったけれど、アンリがそばにいたし。
そばに誰かがいてくれるから。
寂しいと思ったことはない。
けれど、アンリは最初は持っていたものを失って。
その喪失感を持ったままひとりで暮らしてきた。
その心情は、シオンには計り知れない。

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