10話「楽園に酒は必須」
ヒンメル
「アンデルセン!!!
冷蔵庫で冷やしているワインを持ってきなさい!!
一番、値が張っている奴を!!
大丈夫です。このワインは国際議員の自腹です。
遠慮なく出してください!!」
ヒンメルが時々敬語を忘れる。
感情が昂ぶっている。
それだけは確かである。
こういうときのヒンメルを抑えることが出来るのはアンデルセンだけである。
勇者カレンでもできないことである。
アンデルセンは下僕のようにワインをテーブルの上に置く。
グラスも何も置かなかった。
ヒンメルの行動を熟知しているからだ。
ゴトン。
シャンデルセンル・フェトー(1944年)
時価40万イェン。
最高級ワインの部類の一つ。
フェルト国家シャンデルセンル地方で厳選された葡萄を収穫して
発酵させたワインである。
シャンデルセンル地方の葡萄は味も凝縮されている。
特に豊作で質も良かったグッゲンハイム1944年に収穫した葡萄を発酵させたものである。
歴史・国家・味・年代・金。
すべてに手間暇をかけた渾身のワインである。
フェルト国家のワインは非常に厳選されている。
そして、品質と甘みを徹底的に計算して管理育成された葡萄である。
それを計算して発酵。
計算どおりの葡萄。そして発酵。
その計算から外れた葡萄は絶対に入れない。
徹底した上質の葡萄のみを使った非情なるワイン。
その値段は量産されているにも関わらず40万イェン。
フェルト国家のらしさを感じるワインである。
このワインの味は40万払っても惜しくない。
そう思わせるワインである。
・・・・そういうワインであるのだが。
ゴクンゴクンゴクンゴクンゴクンゴクン。
ヒンメルはそんなこと知ったことか。
そんな努力を知らずに、ワインをラッパ飲みする。
グラスにも注がず、ビンのまま飲んだ。
そもそも味に頓着がないというのはそういうことで。
高くても安くても美味しければそれでいい。
そういうスタンスのヒンメルである。
このワインが高いのは別にいい。
味なんて知ったことか。
ヒンメルはただそれだけの観点で飲んでいる。
ヒンメル
「ぶはあああああああああああああああああ!!!!
この喉の焼ける感覚は最高じゃないですかあああ!!!
ねえ、勇者様~~~~~~!!!!」
カレン
「・・・・・・・・・。」
美食家のカレンにとっては卒倒しそうな飲み方である。
全くワインの楽しみを知らない飲み方である。
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