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2001/03/09 (Fri) 1話『帰還』



クロンは抱きあげている女性を下ろした。
シェクスピアはあまり幸せな人生を送ってきたとは言えないと思うが、それでも自分らしい生き方は出来たのではないかと思う。
それはクロンの主観であって、シェクスピア自身がどう思っているかは分からないが。

クロン「さて……感慨に耽っているわけにもいかないな。」


クロンは周囲を見た。
森の一部は燃えている。
夜の空もその影響で赤く光っているように思えた。
空には竜が飛び交っており、騒音もひどいぐらいに聞こえた。
落ち着くところがない光景……それが戦場の光景だと感じると少しクロンはさみしく感じた。

それもそうである。
今は戦争中なのだ。
殺さなければ殺される。
そうした徹頭徹尾残虐な非常な世界が目の前にあるのである。







クロン「しかし……どうするかな。」


自分も早く指揮官として出ないといけない。
しかし、シェクスピアをこのままにしておくのも忍びなかったし、後方支援がないのも考えもであった。
人材不足が否めないのはクロノス自治区の実情であった。


どうしたものか。
思案を巡らしている間に、彼はやってきた。









クロン「久しぶりだな。」

クロンは後ろからやってきた人物を振り向かずに言った。
後ろからやってきた人物は非常に存在感があり異質な雰囲気をもっていたからだ。
それでも敵ではない。

クロン自身も見た目と独特の雰囲気から良いイメージは持っていなかった。
話してみると気さくで皮肉屋なだけだった。

そして、何よりも、誰よりも禁忌に対する執着心を持った人物だった。
シェクスピアをも超える追及心は正にメイガス。
禁呪使いとしての資質を最大限兼ね備えた人物であった。








アズクウェイド「よう。」

目隠しは相変わらずだった。
変わっていた点があるとすれば、それは髪に少し白髪が混じってきたこと。
そして貫禄が出てきたところであるだろうか。
クロンがあった数年前は若さと猪突猛進なところがあったが、今では落ち着きと異質さが入り混じったいかにも禁呪使いという雰囲気があった。

アズクウェイド・ストレイグス。
シェクスピア・ノアールの幼馴染で、禁呪の発動に失敗して魔界に連れ込まれた男である。


……しかし、クロンは彼とシェクスピアが知り合いであることを知らない。
シェクスピアは彼のことを一言も口にしなかったこともある。













クロン「どこに行っていたんだ?」

アズクウェイド「ちょっくら、魔界に。」

クロン「何?」

クロンはあり得ないと思った。
魔界に行くこと自体は可能である。
そういう魔法が存在するぐらいなので、行くことは問題ではない。
逆も然りであり、戻ることも大して問題ではない。

問題なのは精神の問題だ。
人間であるアズクウェイドが精神的に許容できる世界ではない。
異次元の生命体が闊歩する魔界では身体的にも精神的にも疲弊しきってしまう。
そして、疲弊が重篤になり、精神が破綻する。



アズクウェイド「ん?」

詰まるところ。
この男は骨の髄まで禁呪使いであったと言うことだ。
普通の人間でありながら、精神は初めから破綻していたのだ。
だからこそ、魔界でも生活ができたのだろう。

クロンはそう判断した。





クロン「……まあ、いい。戻ってきた理由を問う気もない。いまさら、魔界に行った経緯を聞く気も時間もない。今は状況が状況だ。お前には私に協力する理由はないが……魔界への橋渡しをした料金は清算してもらうぞ。」


数年前。
アズクウェイドは突然クロンのもとへ現れた。
『魔界への行き方を教えてほしい』。
そう言った。


クロンは止めたほうがいいとは言わなかった。
一般常識的なことはクロンが言わなくても、別の人間が言う。
それを聞かずに、クロンのもとまでやってきたのだから、何が何でも魔界に行きたかったのだろう。
それならば、素直に教える。


クロンとしても、サンプルは欲しかった。
知識の宝庫とも言われるクロンを要しても、禁呪は不明なことが多い。
意図的に資料が抹消されていると言うこともあったからである。
だったら、試験サンプルが必要になる。
そう思っていた矢先にアズクウェイドというサンプルが現れたというわけだ。



これは面白い。
サンプルでしかなかった人物が本物のメイガスになって帰ってきた。
魔法の実力としては、シェクスピアを凌駕することは間違いない。
そして、彼がどういう魔法を使うのかは興味があった。
研究者としての側面を持つクロンには。


やはり、善行は重ねておくものだな。
足長おじさんを続けていれば、それが返ってくるものだと。
その知識や援助が例え常識から外れた禁忌なものであっても。




アズクウェイド「了解。ここは――――――俺がやる。」

クロン「わかった。任せる。指示は追って出す。」

アズクウェイド「俺は指示は受けんぜ。」

クロン「分かっている。」




ヒュウウ!!!!

そう言うと、クロンはすぐさまいなくなった。
クロンにとって大事な人だと言うのに、こういうときは薄情なのだな……と思っていても仕方ない。
彼はもっと大きなものを守るために今も戦わないといけないのだから。




アズクウェイド「ふう……やっといなくなったか。」




クロンがいなくなったこともあり、アズクウェイドはシェクスピアをじっと見た。
抱き上げることはしなかったが、じっと静かに眠っているシェクスピアを見つめていた。
そのときのアズクウェイドの表情は……シェクスピアから言わせれば『らしくない表情』であった。
それぐらいにアズクウェイドは憐憫な表情を見せていた。
もっとも、それが分かるのはシェクスピアぐらいだと思うが。





アズクウェイド「……よう……久しぶりだな。」

アズクウェイドは誰にも聞こえないように静かに言った。
シェクスピアに染みついている血を全く気にせずに――――――――アズクウェイドはシェクスピアを抱きしめた。

こうした所を見られないためには、クロンが早く立ち去ってくれて助かったか。
アズクウェイドは思った。




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こんばんわ。

ここでアズクウェイド登場ですか!
あの後どうなったのか気になってましたが、ここで戻ってきたんですね。

今後、何かをやらかしてくれそうな予感が…?

気になるので続きを待ちます。(^^)

2010/03/09 23:12 | 鈴代まお [ 編集 ]


Re: タイトルなし 


鈴代まお様へ
こんにちはです。
まあ、アズクウェイドがここで戻ってくるのは……まあ、成り行き?みたいなものです。
ここで戻すと面白そうかな~~ということです。

自分でも結構予想外な展開になったので、他人から見るともっと予想外かもしれないですね。
いつもご愛読ありがとうございます。

2010/03/10 07:19 | LandM [ 編集 ]


 

アズクウェイド、カッコイイですね…常時目隠し着用とか。すばらしい覆面(*ノωノ)vvv なにかに傾倒しすぎてぶっ飛んでるのに表面上はおだやかなとことかたまりません!

…えーと、久しぶりのコメでいきなり燃え語りしてすみませんですorz

シャクスピアの外伝(?)をコソコソ読んでいた時からアズクウェイドすっごく好きだったのでつい…いいところで還って来た(゚∀゚)! という喜びのあまり; シャクスピアを抱きしめる姿とかとても感慨深いです。カッコイイなあ…(語彙が少なすぎるw)

なんだかんだで追いついたと思ったらまたしても置いてかれはじめたので、がんばってお話に追いつきたいと思いますーノシ

2010/03/28 12:34 | 卯月 朔 [ 編集 ]


Re: タイトルなし 

読むのは遅くて構わないと思いますよ。
ここのペースで読んでくださればいいですよ。最近は更新スピードも遅くしてますし。そのうちたどりついてくると思います。

アズクウェイドは結構人気ですね。
高瀬様に大感謝なキャラクターです。
このキャラクターは私が作ったのではなくて、高瀬様がつくられたものなので。
やっぱり格好いいキャラは違いますね。
別感覚のキャラクターの必要ですね。

ご愛読ありがとうございます~~。

2010/03/28 18:28 | LandM [ 編集 ]


 

アズクウェイド!!
ここで登場するとは思わなかった…………
カレンはどうするのか……………………………

2011/06/14 19:55 | 彩舞 夜千 [ 編集 ]


彩舞 夜千様へ 

アズクがこの辺で登場するのは空気を読んでいるのかいないのか・・・。
相当微妙なところではありますが、それでもカッコイイ!!に集約されるのは間違いないですね。
どこのキャラクターが出てくるかは私の気まぐれだったりします。

2011/06/15 06:27 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


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