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2000/10/06 (Fri) 3話『目覚め』


クロンは眼を覚ました。
自分の身体に大量の汗をかいていることがわかった。
麻色の肌が汗でびっしょりになっているのが自分でもわかった。
黒服には汗の形跡があり、紫色の鮮やかな髪の毛は汗が張り付いていて艶がなくなっていた。



ダークエルフである彼の特徴的な大きな耳はわずかに震えているように思えた。
それは恐怖からなのか、未知という分からない者へ対するものなのかはクロンには分からないことであった。






クロン「ふう……。」

彼は自分自身で落ち着くように耳を触った。
震えがとまったようには思えなかったが、それでもクロンにとっては気休めにはなった。


特段、風邪をひいたわけでもなければ、体調が悪いわけでもない。
夢が悪夢だったといわれればそうなのかもしれないが、悪夢ではないと思う。
しかし、何かと夢見が悪いと言えばそうであった。





クロンは髪を掻きあげて、自分の姿を鏡で見る。

腰にかかる程度にまで伸びた紫色の特徴的な髪があった。
髪留めなどで留めてはないが、それでも整えられた髪の毛は正にダークエルフの特徴的な髪であった。

存在感がある髪の毛とは対照的に眼は穏やかで優しい瞳であった。
誰に対しても罪を許してしまうような瞳であった。
彼は真実―――――他人に対して優しかった。

クロン・ウェスターノ。
彼は魔王と呼ばれていた人物であった―――――。






地球から遥か彼方離れた世界にこの世界はあった。



グッゲンハイム。
進化論とは異なる誕生をした世界。
精霊の導きによって誕生した生命体がここに多く存在していた。



このグッゲンハイムの世界では多くの人種が住んでいる。
人間以外にも、動物の耳を持つワイルフ(獣人)、エルフ・ダークエルフ・コルボックルなどである。
そういた多種多様な種族が住んでいるのがグッゲンハイムという世界であった。

しかし、グッゲンハイムの歴史で人間以外の種族が覇権を握ったことは一度もなかった。
その関係もあり、総じて人間以外の種族の人口は少なかった。





その状況を打開しようと考えたのがクロン・ウェスターノであった。
彼は世界各地を回りあらゆる種族を集めた。
その結果の産物としてクロノス自治区という場所を形成したのである。



クロノス自治区。

1890年代に設立された自治区。
基本的に人間以外の種族の受け入れをする自治区であり、人間は条件(特別な事情で国を追い出されたなど)がない限りは住めない。
総人口は1000万人で、その大半はダークエルフとワイルフ(獣人)で占められている。

これを形成したのはクロンの偉業といってよかった。
人間の隅で住んでいた種族がようやく自由に住める世界であったからだ。







クロン「……疲れているのか?」

クロンは夢について考えていた。
悪夢ではないが、汗が相当ひどい。
特徴的な紫色の髪の毛が汗によって張り付いていた。
それが余計にクロンに嫌悪感を抱かせ、不快になる。
麻色の肌に垂れている汗を拭きとる。

鏡を見てみたが、少し顔がつかれているように思える。
それが政治の激務からか、それとも先ほどの夢から生じたものなのか。
それはクロン自身ではわからなかった。






そして、隣にいる金髪のウェーブのかかった女性を見やった。
彼女はクロンの妻であり、ワイルフである。
人間とそこまで差異がないが、耳が特徴的で猫の耳となっている。


ミルフィール「す~~す~~。」

クロンにとって、彼女の健やかな寝顔を見ることが何よりも幸せであった。
そして、彼女の耳に触ることが落ち着くクロンにとって落ち着かせる動作であり、愛情表現でもあった。






クロン「ふにふに。」
ミルフィール「ふあああああ………。」

相変わらず、ぐっすりと眠る妻である。
彼女の笑顔にどれだけ救われたかはもう分からない。
彼女がずっと笑顔で健やかに、そして献身的に支えてくれたからこそ今のクロンがある。
それだけは間違いない。
彼女を顔見れば、クロンは正常に戻る。
安心したクロンは落ち着いて思考を展開させる。

しかし、考えて結論が出るわけではなく、外で気分展開することを思い立った。










クロン「外にでるか……。」

だからと言って、何か変わるわけではないだろうが……。
そのようなことを独り言を発してから、彼は外に出る準備をした。
誰かが襲ってくるようなことは……あまりないと思うが、用心して家には一種の魔法の罠を仕掛けておいた。


最後に自分の子どもと妻の頬にキスすることを忘れずに――――――。






………………………………………。








……………………。








外に出た。
外は広大な大地に包まれていた。
クロノス自治区は余っている土地を間借りして形成されている。
その関係もあり、今でも未開発の世界も多いのが実情である。
しかし、それは人間にとっては住みにくくても森を住みかにするエルフやモンスターと呼ばれる動物には格好の場所であった。
荒れた大地、人知が及ばない深き森。広大な山脈。
人間にとっては住みにくくても、エルフなどの種族には住み心地がいい場所である。


今でも広大な大地がクロノス自治区を占めていた。
この状態を維持できれば、この自治区は何とかなる。
そうクロンは確信をしていた。





クロン「いつ見てもここは飽きない……。」

ここはクロンが作った自治区と言っても過言ではなかった。
クロン自身が世界中を回って、エルフ・ダークエルフ・ワイルフ・モンスター……それぞれをかき集めて作った自治区であった。
それまでは各国家がそれぞれで種族を迫害を受けていた。
それを食い止めここまでしたのはクロンであり、それを今でも誇りに思っていた。


クロンのクラス『サタン』。
魔王と呼ばれるこのクラスは聞くものによっては畏敬の念を抱くかもしれない。
しかし、人間以外の種族が少ないこのグッゲンハイムの大陸ではあまり役に立たないのが現状だ。
このクロノス自治区にいる人口も1000万人と少数しか住んでいない。
クロンが世界中引っ掻き集めてこれだけしか集まらないぐらいに、人間以外の種族は少なくなっていた。




クロン「自分の役割はここまでと思っていたのだがな……。」

少しだけ……クロンはその役目は終わっているのではないか……と思ったこともある。
クロンの役目はこの自治区を形成して守ることだと。
それを維持することまでが役割だと思っていた時期もあった。


改めて、クロンは大地の広さを感じた。
未開発の土地を分譲したという経緯もあり、土地は広大であった。
クロンたちのような人間と同じぐらいの小さい知的生物が楽に住める土地である


風が吹いた。
クロンの紫色の髪がなびく。
クロンはそのなびいている髪を整えて景色を眺める。
この大地は変わらない。
どんなに人が反映しても、大地自体が変わることはよほどのことがない限りない。
ミルフィールの笑顔と同じように不変のものだった。

それを感じたクロンは不意に安心した。
ならば、自分も変わらなければいい。
今までやっていることは間違っていない。
後は、もっともっと困っている異種のものをここに住める環境を作り出せばいい。
そうクロンは思った。









クロン「……精霊は私に何を期待する?」

だからこそ、さっきの夢に悩まされる自分に疑問を感じる。
自分はやっている……と自己自賛するわけではないが、





クロン「……どうすればいいかな………。」
クロンは無意識に呟いていた。




グッゲンハイム1905年。
クロノス自治区で世界の歯車が動き始めた。


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comment











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初めまして 

いつもコメントありがとうございます。振り替え休日です。

面白い設定で、正にファンタジーの世界観が出ていますね。大人っぽい感じもして僕に丁度良いです。

僕はファンタジー部門に書いているのにあまりそれと関係のない話ばかり書いている気がいたので、とても参考になります。

ダークエルフと聞くと「ロードス島戦記」等を思い出します。
絵師の方の絵もまた素晴らしいので、小説と絵が融合していて二重に驚きです。

いろんな意味で刺激を受けましたので、これからもがんばってください。

短文で申し訳足ませんが、それでは、また!

2010/02/02 20:57 | 振り替え休日 [ 編集 ]


Re: 初めまして 

振り替え休日様へ。
こちらでは初めましてです。
しかし、本当に訪問者増えましたね。ここは。。。
まあ、本当にうれしいことです。
どうもどうもです。

確かに王道ですよね。
最近、ファンタジーと名を打った王道ファンタジーが少なくなってきていたような気がしてきましたので、私としては王道ファンタジーを作りたかったんですよね。それで色々資料探しをしたんですけど、なかなか王道ファンタジーの資料がなくて大変だったのが記憶にございます。まあ、いろいろ絵も設定も中身をこだわりを見せた作品なので、また見てやってくださいませ。
コメントありがとうございます。

2010/02/02 22:33 | LandM [ 編集 ]


 

お邪魔します。

早速読ませて頂きました!
人物紹介からジワリジワリと…。

まだ初めの方で世界観とかを自分なりに頭の中で想像しつつ読み進めています。
ただ一つ思ったのは…ミルフィールさんの寝顔は同姓の自分から見ても鼻血を噴きそうなぐらい魅力的だと思います。旦那さんだったらそれはもう一時も目を離したくなくなる筈だ。分かるよ…クロンさん。

少しずつ読み進めていこうと思っています。
また遊びに来ますね★

2010/02/19 20:42 | Night Baroness [ 編集 ]


Night Baroness 様へ 

どうもNight Baroness様。
読んでいただいてありがとうございます。
ミルフィールはこの作品一可愛いというスキルを保有しているので、やっぱりそういった意味では大人気ですね。……出番が皆無なのは申し訳なく思っていますが。ファンタジーとしてはこういう存在は必要不可欠ですからね。楽しんで、喜んでいただければ幸いでございますです。キャラクターに対する愛はあるつもりなので、こういうコメントがあるととてもうれしく思います。

またお時間がありましたら、読んでくださいませ。

2010/02/19 22:31 | LandM [ 編集 ]


 

ミルフィーユカワユス。

2010/04/18 07:17 | CHIゆ [ 編集 ]


Re: タイトルなし 

CHIゆ様へ。
どうも、こちらでは初めましてです。
LandMです。

ミルフィールはやっぱり萌え萌えランキング一位ですからね!!
可愛いのです。
……それ以上の出番がないので悲しいのですが。


2010/04/18 07:34 | LandM [ 編集 ]


 

コチラでは初めましてになります。俊帝です。

やっと少しずつですが、読み進めることができるようになりました。

まだ序章の3話ですが・・・ミルフィーユが萌えですね♪ww いてもたってもいられなくなり、コメントした次第でありますww

忙しい身であるため、読むのがとても遅くなってしまうかもしれませんが、ここまで読んだ感じ、とても面白そうなので、どうにか追いついてみようと思います♪

それでは失礼します♪

[俊帝GX]

2010/04/28 02:18 | 俊帝GX [ 編集 ]


Re: タイトルなし 

俊帝GX 様へ
初めましてです。
ミルフィールはポエポエ系ヒロインですごくかわいいのでかわいがってあげてください。
忙しいのは誰もかれも同じだと思います。ご自分のペースで読まれたらいいと思いますよ。
またいつでも寄ってくださいまし。

2010/04/28 07:57 | LandM [ 編集 ]


 

こんにちは、kio11です。
魔王視点の話というのも面白いですね。誰に焦点を置くかによって物語の見方はガラッと変わるように思います。登場人物のバックボーンが分かるとその人物に愛着が湧いてきますし、人間関係なんかも読んでいて楽しそうです。魔王にもちゃんと日常や幸せが存在しているのですね。

また読ませて頂きますねー。

2010/05/09 02:21 | kio11 [ 編集 ]


kio11 様へ 

最近は魔王視点の話も多いので、そこまで珍しいことでもないですけどね。
けど、楽しんでいただいたようでよかったです。人間関係はそこまで重視していないですけどね。誰だって生活というものはありますからね。そういうのは丁寧に描きたかったといのはありますね。

ご愛読いただきありがとうございます。

2010/05/09 05:39 | LandM [ 編集 ]


 

こんにちは。
スロウペースながら読んでます。
なんだから逆転思想がいいですね。

あまりない設定ですよね。

その世界観すごいと思います。

2010/10/13 11:07 | ありま氷炎 [ 編集 ]


ありま氷炎 様へ 

確かに結構逆転思想ですね。
当時は普通の感覚で描いていたのですが…まあそれはそれですね。
世界観は確かに面白いと思います。
終盤になると結構引き込まれますね。

ご自分のペースでお読みくださいね。

2010/10/13 21:07 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


 

 こんばんは、仙咲です。

 政治的な背景がまるで現実の物のようですごいです。
 それと、ミルフィールさん可愛らしいですね!
 クロンさんも疲れるでしょうけど、こんなに可愛い奥さんがいたら、きっと癒されるでしょうね。

 ではでは。

2010/12/22 22:58 | 仙咲ヒスイ [ 編集 ]


仙咲ヒスイ 様へ 

おお、お久しぶりです!!
かなりお忙しそうだったので、コメントいただき何よりです。
そうですね。クロンはミルミルに癒されるのでしょうね。
可愛さ満点ですからね。

またお暇なときに立ち寄ってくださいませね。

2010/12/23 07:43 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


人間が悪に見えてきた 

クロノス自治区人間は住めない
どうやら迫害を受けてるようでエルフ達は
だが人間を憎んでいる者も中にはいる様な気がします
迫害経験者とか。でも、エルフ達にとっては楽園かなそこは。迫害はそこではないようですので。

一気には読めませんが1話ずつ読みに来ます
1905年から読む事にしました。

2011/02/15 10:23 | ★ハリネズミ★ [ 編集 ]


Re: 人間が悪に見えてきた 

特に人間が悪というスタンスで書いていないですね。
本人的には。
まあ、迫害している事実はあるんでしょうが。
けれど、明確にエルフを迫害しているのは、デュミナス帝国という国ぐらいで、あとは結構寛容に過ごしております。

1905年一番最初の作品であるので、それを読むのはいいと思いますよ。
コメントありがとうございます。

2011/02/16 06:01 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


 

世界観作りこんでますね。
兄さん、教えて欲しいのですが
やはりSFやファンタジーは世界観が
しっかりしていないと駄目ですよね?

架空戦記とかもどうしてその戦争が起こったのか

という理由などもはっきりさせたほうがいいのでしょうか?
それに面積、GDPなどもそれぞれ詳しく
国ごとに設定したほうがいいのでしょうか?
それよりも読者の想像に任せたほうが?

2011/07/15 00:53 | ねみ [ 編集 ]


ねみ 様へ 

この世界観自体は結構適当にしてますよ?
私も。かなりいい加減な設定ではあるので。

世界観をしっかりするのも良いですね。
私はキャラクターで世界観を作るやり方をとっています。

たとえばクロノス自治区はクロンがまとめた自治区で、もともとはエルフや獣人がそれぞれの豪族が住んでいて。それを取りまとめたのがクロン。・・・とか・

後、300年前に大英雄セロ・デュミナスという人物がいて、その人が龍族を根絶やしにした。
その英雄は全世界をまとめて帝国を作った・・・みたいな感じで。


もちろん、他にも歴史上の偉人をたくさん作って国を形作ってますね。
私の場合は。
参考になればですけど。

2011/07/15 17:19 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


 

このページを読むのは久しぶりだなぁ。
懐かしく読まさせて頂きました。

いやぁいい。
クロンの偉大さがじっくりと沁みてきました。
このままであればと願いたくなります。

2011/10/13 14:45 | ぴゆう [ 編集 ]


ぴゆう 様へ 

確かに初連載の最初ですからね。
結構気合を入れて描いたつもりではありますけど。
確かにこの頃の描写はこの頃の描写で良さがあるんですよね。
ある意味クロンがクロンらしいですね。

2011/10/14 12:41 | LandM [ 編集 ]


魔王様は・・・ 

亜種族の王様で、人間から見れば魔王で、多数である人側からすると人間以外集めて何かやってる怪しい奴ですね。

しかも体制に反発するどころか国を造ってしまった。

よろしい、では戦争をしようじゃないか、とかどこかのお偉いさんが言ってたりしそう。

2011/12/22 11:11 | 恋町小路 [ 編集 ]


恋町小路 様へ 

まあ、そんな簡単に物事は進まないですけどね。
進んでいるならとっくに滅んでいると思いますし。
その辺は結構難しいかんじになっております。
それはそれで面白いですけどね。

2011/12/22 19:35 | LandM [ 編集 ]


地球上には人間しかいない。 

この世には人間が住んで人間が支配してますが、ファンタジーの世界だと人間以外の種族も出てきますね。
「ハリー・ポッター」も「ロード・オブ・ザ・リング」もそうでした。

グッゲンハイムも人間が支配してて、他の種族はあまりおもしろくなかったんですね。
この世で言う移民に寛容と言うもので、他の種族も入れるようになり、人間が支配力を失ったのかな?って思います。

サッカーに喩えるとドイツ、フランスが移民を入れて黒人選手が多くなり、色んなタイプの人間が代表選手となり、生粋の当国の人間が少なくなったと言う印象も受けますね。

2015/05/11 19:58 | 想馬涼生 [ 編集 ]


想馬涼生様へ 

このクロノス自治区に関しては少し事情が違うというのはあります。この自治区は魔王というトンデモ支配者がいて、魔王中心に自治区が回っています。あとはそもそも人間以外の種族が集まってできたのが、クロノス自治区という訳です。

この大陸には人間だけの国家もあれば、混ざった国家もたくさんありますね~。
しかし、移民の問題は難しいと思います。

いつもコメントありがとうございますです(^-^)/

2015/05/12 12:51 | LandM [ 編集 ]


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