レイビア「……舞い入ずるはお……に……、これは禁呪か。」
陰に紛れたレイビアは魔法を詠唱しようとした……が、一瞬それが唱えられずにいた。
レイビアは禁呪を唱えようとしたのである。
禁呪を使用するにはそれなりの詠唱手順がある。
「我力の一端を解放する」……の下りから始めること。そして、禁呪を使用できるスキルを持っていないと不可能である。
レイビア自身はそれが禁呪だと知らずに詠唱しようとしたので、精霊が強制的に詠唱をストップさせたのである。
レイビア「―――――神隠しの童子が力の一端を解放しよう。」
それでもレイビアは禁呪の特性をすぐさま理解し、禁呪を唱えようとしていた。
カレン「……いける。」
だが、カレンはそのレイビアのわずかな揺らぎを見逃さない。
完璧なる影で隠れていたレイビアの気配を見つけることができたのである。
それは半ば戦闘で培われた本能だともいえるものである。
躊躇いながら攻撃してはられない。
本能で感じ取った場所に突き進んで叩き潰す。
それが一番効果的である。
カレン「カレン・エスタークが大地の紋章を構築する。
砕くは力。
叩き潰すは大地の鼓動。
全ての理を踏みつぶして、ただひたすら力を推し進める。
障害は紙の如くに潰してやろう。」
カレンは影へと踏み込む。
普通の神経では躊躇われるほどの漆黒の影。
何も見えない闇の領域へと踏み込む。
その漆黒の中でレイビアの殺気と魔力を感じ取ることは出来た。
ただ、そこへと突き進む。
そして、叩き潰すのみ。
レイビア「我の腕に展開するは愛する鬼の手である。
広がるは屈強の筋肉。
鉄のごとくの皮膚。
木さえもつかみ取る大きさ。
万力を備える剛腕である。
魔界簡易召喚魔法 鬼の手。」
メキメキメキメキメキメキメキメキメキ!!!!!!!
その瞬間、レイビアの右腕が急激な変化を起こした。
それこそ人間とは思えない大きさと異型さを誇る腕に変化したのである。
まさに鬼の手であった。
レイビアは自らの腕も簡易的に鬼の手に変化させたのである。
少女の大きさとはあまりにも釣り合わない鬼の腕。
その腕だけで、レイビアの身長を超えていた。
カレン「…………!!」
カレンは漆黒の影の中で明確にレイビアをとらえた。
レイビアの右腕が腕が鬼の手になっていることに若干驚きつつも、何もなかったかのように大剣を振り上げた。
鬼にまるごと遭遇したカレンがたかだがレイビアの腕一本が鬼になったぐらいで驚いていたら命が幾つあっても足らない。
初めから決めていた通り。
進んで叩き潰す。
カレン「振り上げるは早風の如く。
たたきつぶすは大地の怒りの如く。
地属性剣技 落下断!!」
レイビア「破!!」
カレンが渾身の力をこめて振り下ろす。
レイビアは鬼の手で迎え撃つ。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!
その瞬間、覆われていた影が崩壊した。
そして、瞬く間に土埃へと変化した。
カレンの聖剣グラストとレイビアの鬼の手がぶつかり合った衝撃の結果であった。
あまりの力のため、そのエネルギーが地面へと向かったのである。
レイビア「………。」
レイビアは思わず苦い表情をした。
一点目はカレンを逃がしたことである。
砂煙と共にカレンは消え去った。要するに戦う気は初めからなかったということだろう。
二点目は………。
ツーーーーーーーーーーーーーーーー。
鬼の手で対抗したにも関わらず、レイビアの手から鮮血が流れていた。
鬼の手を全て粉砕し、かつレイビアの腕までもダメージを与えたのである。
レイビア「…彼女はすごいのね。」
自分の鬼の手が壊された。
しかも、あの勇者という名の化け物は自分のポテンシャルの20%しか発揮していない。
自分がこれから成長することを加味しても、あれは明らかなる化け物であることには間違いない。
レイビアは自分で流している血を舐めながら空を見上げた。
……月は満月だった。
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