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2010/05/07 (Fri) 3話『打算と策謀』

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ネーネ「そうれはそうと……。」

サハク「なんだい。ネーネ。」

ネーネ「アイアトーネ本庁に隕石魔法の詠唱が見られます。規模はEXランクになります。」

サハク「…………!!」

サハクは驚くよりも先に笑った。
確かにそうだ。
あの魔王が何の手を打たずに、戦争を始めるわけがない。
そして、むざむざクラッシュ ソードが来るのを待ってくれるはずがない。
そんなことをする暇があったら、様々な罠とトリックを重ねてくるだろう。










サハク「そうか。」

そして、それだけ言った。
少年王は限りある可能性を考慮に入れて考えた。


魔導砲で隕石魔法を撃ち落とせるか?
いや、かなり難しいだろう。
アイアトーネ市にいるのならばともかく、超遠距離から隕石魔法を撃ち落とす芸当など神業を超えている。
例え、ネーネの射撃精度が高いと言っても限界はある。
撃ちおろせる可能性は5%あるかないか。

アイアトーネ市の市民の命に5%の博打はかけられない。
レートが破たんしている。

かと言って、アイアトーネ市にEXランクの隕石魔法を防衛する結界は存在しない。
ないものを今から作るのは不可能だ。


だったら、敢えて隕石を落とさせて大規模な戦争状態に仕立てるか?
……それもかなりリスキーだ。
クロノス自治区の戦力はまだ不明なところが多い。
鬼まで登場している状況では、どのような異端な存在が出てくるか分かったものではない。
しかも、魔王の策略を考慮に入れれば苦戦するのは間違いない。
50%……勝率があるかどうかだろう。

そもそも、今シュラインは大国フェルトと戦争をやっている。
長期間戦争するだけの人材も物資も存在しない。
一見、シュラインの方が有利のように思えるが、戦争が長期化して不利になるのはシュラインなのには間違いない。





ネーネの忠告もある。
いつ、アクシデントが発生するか分かったものではない。
その状況になったら、知識や経験が豊富なクロンの方がより適切な対応ができる。
その辺は差が出るのは否めない。



良い作戦を立てたものだ。
どちらに転んでも、クロノス自治区が優位に働くようになっている。

隕石を落とされたくなければ、こちらの要望に応じてくれと言いたげだ。
恐らく、それは確実にしてくるだろう。

それをしてこないのは、タイミングを見計らっているのだろう。
タイミングを外せば、戦争状態が続くのは目に見えている。


最後に息を吐いた。





サハク「は~~~~~~!!!
    やっぱり上手なあ!!魔王は!!
    狡猾だ。
    戦上手だ。
    交渉上手だ。
    駆け引きは神業だ!!
    ここまでの妙を持っている人物は世界に10人もいないだろうなあ!!
    失敗だなあ。
    国防費をフェルトを中心に回したツケが回ったな。
    それとも、そういう状況にした軍に問題があるか?
    どのみち……不利なのは変わらないか。」

部下「どうされるおつもりで?」

サハク「アイアトーネ市に伝達!!
    和平交渉の準備に取り掛かれ。」

この状況で戦争をするのは得策ではない。
戦争とは勝つために行うものである。
勝てる保証がない戦争はするべきではない。
それは歴史の偉人も証明している。

わずかな希望にすがるぐらいなら、妥協案を探したほうがいい。
サハクはすぐさまそう判断した。







部下「兵士は納得するでしょうか。」

サハク「するさ。
    僕が納得させる。
    プライドは取り戻すことが出来る。
    領土も取り戻すことが出来る。
    権利だって同じだ。
    だがな、人の命は取り戻せない。
    死んでしまった命は生き返らない。
    ……返らないんだよ。
    なあに。
    奴隷民族の矜持なんてたかだか知れてる。
    デュミナスの子飼いのプライドなんてくそだ。
    そんなくだらないものより、命のほうがよっぽど大事だ。」


サハクは言い切った。
両親を早くに亡くしているサハクは命の重みを知っている。
命だけは返らないものだと感じている。
身体で。
だからこそ、戦争の中に生きていても命の尊さを忘れたことがなかった。
伊達に、カリスマがある少年王と呼ばれているわけではないのだ。






サハク「……ん?」

そう思って、アイアトーネ市の状況を見た。
アイアトーネ市の一部で純粋な魔力の粒子が天に向かって流れていた。
純粋無垢な魔力の粒子……それはすなわち、聖剣グラストの魔力だ。
間違いない。
デュミナスの勇者は生きている。

それはサハクでなくても分かった。







サハク「……いや、戦争を継続しよう。
    勇者が戦っているんだ。
    民衆である我らが戦わないでどうする。
    和平交渉は水面下で進めておけ。
    いつでも取り掛かれるように準備万端でな。」

勇者が隕石魔法を食い止めれば……戦局は大きくシュラインに傾く。
そうすれば、戦争に勝てる。

和平交渉はすぐに取り掛かれるようにしておくだけでいい。
サハクはそう思いながら、勇者の光を見ていた。

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クロンはもちろんですが、サハクもかなりの戦略家だったのですね。
自分の弱点も含めた技量がきちんと把握できているあたり、やっぱり賢いんだなと思いました。

それにしてもクロンの瀬戸際外交、やむを得ないとはいえ恐すぎです。

2010/05/07 18:28 | 若野 史 [ 編集 ]


Re: タイトルなし 

若野 史様へ

まあ、クロンは言っていることは穏やかですけど、やっていることがエグいのは今に始まったことでもないですけどね。こういうのを瀬戸際外交というのは確かに言いえて妙ですね。
サハクは賢い……のかなあ、と思うときもありますね。この作品は性質上馬鹿な人物は出てこないですね。
この状況下で馬鹿な人物が出てきたら、利用されるか殺されるかどちらかです。魔王と少年王。竜王と勇者。この狭間では馬鹿な人物はすべからく運命はきまってますからね。

2010/05/07 22:05 | LandM [ 編集 ]


 

「合理主義者の犯す最大の過ちは、相手も合理的な判断の末、自分たちの損になるような馬鹿な真似は絶対にしないだろう、と考えるところにある」

……とか。

クロノス自治区もアイアトーネ市も、相手の予想外の対応にどう対処するかが問われますなあ。

指導者は二人とも合理的な思考の持ち主ですが、はてさてどうなるか、続きを待ちます(^^)

2010/05/09 14:13 | ポール・ブリッツ [ 編集 ]


ポール・ブリッツ様へ 

確かにどちらも合理主義者ですね。
もう最終章が始まって察しての通り、戦争は終結に向かいつつあります。
この二人は設定上とりあえず、合理主義者ですからね。
まあ、どうなるかは・・・続きをご覧になってくださいませ。

いつもご愛読ありがとうございます。

2010/05/09 17:32 | LandM [ 編集 ]


 

サハクもさすが、一国の運命を背負う人ですね。
この星自体への警告だという爆発も気になりますが……。
最終局面、どうなっていくのか。
カレンさん、どう出るのか。
期待させられます!

2014/12/10 14:03 | 椿 [ 編集 ]


椿 様へ 

星の警告に関しては次回作で分かります。
もっとも10年後の話ですが。

この局面は状況が二転三転するので面白いと思います。
いつも読んでいただきありがとうございます。

2014/12/10 20:53 | LandM [ 編集 ]


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