マユル「………!!!……ぐ!!ホルンの森の周辺まで飛ばされた!!??」
マユルは驚くと同時に焦っていた。
さっきの爆発はなんだ?
かなり次元が歪んだように思えた。
まるで自分がタイムスリップしたときのような歪みを感じた。
……かなり異次元な体験をしたことには間違いない。
いや、それは今考える必要はない。
考えるべきことは作戦遂行が可能かどうか、そして、自分の身体を心配することだ。
まずは自分の身体だ。
マユル「……損傷率は30%を超えている……万全の状態で戦うのは厳しいか。」
かなり負傷している。
やはり、素体が少年であることは厳しい。
満足に能力を発揮できない。
もっと自分が大人であれば……と思わずにはいられない。
爆発の衝動でも、カレンは大したことなくても、こちら側はかなり損傷を受けた。
この差は大きい。
カレンと対抗できる力はあまりない。
ただでさえ能力差がある。
それに加えて、こちらが負傷していたら勝ち目はないに等しい。
ただ、目的は勝つことではない。
カレンを誘導しておけばいい。
それならば、まだ作戦遂行は可能だ。
がし。
マユルは吹き飛ばされていた自分の槍をつかんだ。
少年の中で様々な葛藤が生まれたことは確かだった。
この身体で戦うこと自体間違っている。
そもそもまだ成長期間だ。
何があっても、ここは耐えて生きるべきだ。
クロンだって、この段階で戦線離脱したところで攻めはしないだろう。
あの男だったら、なんとかやってみせる。
それだけの政治的手腕を持っている人間なのだから。
否。
少年は決意している。
そんな理屈を並べて戦わないわけにはいかない。
今はどんな状況にあろうとも戦わないといけない時なのである。
マユル「まだだ……。
まだだ……まだだまだだ!!
まだこの身体は動く。
この肢体は動く。
腕は動く。
龍の起動可能だ。
竜王のとしての機能は動く。
動く限りは戦う。
戦ってみせる。
たとえ、身体に損傷があろうとも、竜王の機能はまだ動く。
動くんだよ……!!」
齢7歳にして、激動の人生を歩んできたのがマユル・パーチェノークだった。
地球人として、孤児で生まれた彼は生まれながらの実験体だった。
『人類の宇宙空間での成長過程はどうなるか?』
この命題のサンプルとされたのがマユル・パーチェノークである。
誰とも身よりもないマユルはうってつけのサンプルであった。
例えどんな事故があっても悲しむ者はいない。
訴えられることもない。
失敗してもそれがデータになる。
宇宙開発チームにとって、マユルとはそんな存在であった。
そして、宇宙開発チーム以外には彼に存在意義すらなかった。
誰とも必要とされない孤児でしかなかった。
その宇宙船は事故が発生した。
正体不明のブラックホールに飲み込まれてしまい、気が付いた時にはグッゲンハイムの大陸に不時着していた。
マユル以外の乗員は死んでおり、マユルも瀕死の状態であった。
―――その時、転機が訪れた。
当時グッゲンハイムの大陸を支配していた竜王トールフーラ。
龍の血の飲むことによって、奇跡的に生還を遂げた。
脅威的な身体能力と知識を得ることができたマユル。
彼は竜王の指示通りにタイムスリップをした。
タイムスリップの手筈を整えたのは竜王トールフーラであった。
元より、このときには地球に対する望郷の念もない。
地球にとって、彼はサンプルでしかないのだから。
最終的にたどり着いた場所。
グッゲンハイム1905年のクロノス自治区。
時空を超えてきた放浪者がたどり着いた場所。
シェクスピアだけだった。
母親として接してきたのは。
シェクスピアだけだった。
愛情を与えてくれたのは。
シェクスピアだけだった。
ここまで自分を大切にしてくれたのは。
その仇をここでとらなければ、どこで取る。
……どこでも取れないかもしれない。
彼女を殺せるのは今に置いてないかもしれない。
彼女は病気で死ぬかもしれない。
事故で死ぬかもしれない。
戦いでも死ぬかもしれない。
そんなことすら許さない。
あのカレンという女は絶対に自分の手で殺す。
出でなければ、シェクスピアの弔いにすらならない。
別にシェクスピアの気持ちの問題ではない。
マユル・パーチェノークという少年の意地とプライドの問題だった。
動く。
動いてみせる。
全てをかけて。
全身全霊をかけて。
カレンとの戦いに賭ける。
マユル「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
未分類 | trackback(0) | comment(0) |
<<10話『縁側の決戦』 | TOP | その1>>
comment
trackback
trackback_url
http://landmart.blog104.fc2.com/tb.php/291-56eb2c4b
| TOP |