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2000/12/02 (Sat) 8話『やり口』

シェクスピア「……理由を明確に教えて。」

シェクスピアの聞いていることは理にかなっている。
いくら、博愛主義者のクロンでも竜を匿うことはあまりにもリスクが大きすぎる。
人間に反感を買って、住めなくなったら終わりだからである。
だからこそ、今までクロンは人間に反感を買わないように妥協をしてここまでやってきたのである。

それを壊す行為に当たる。
今までの信頼の崩壊でもあり、人間との対立を明確化する引き金になるのがこの竜である。







クロン「魔王は魔を愛でやるものではないか?」

クロンは微笑を浮かべながら言った。
その表情に後悔も躊躇いもないように見えた。
ただ、当然とばかりにそう言っていた。



シェクスピア「……人間様が愛してやらない命を貴方が救おうと言うの?」

シェクスピアは気取って笑った。
それはまるで戯曲のなか繰り広げられる魔女の妖艶な笑みのように見えた。
本心から出たものなのか、それとも別のものなのか、それは本人とクロンにしか分からないことであるだろう。


クロン「せっかく生まれ出でた命だ。どのような魔なる命であれど、愛してやるのが魔王の務めであろう。」


クロンはここに来ても主義主張を変えない。
そもそもこの自治区をクロンが開設した理由も同じようなことであった。



人間が愛さない生命体が愛し合える世界。
それを構築するために作ったのがこのクロノス自治区であった。
勿論、設立当初からこのような生命体を受け入れるに構築したわけではない。
そのときは、ダークエルフや獣人。あるいはエルフと言った、比較的人間社会では生活しにくい種族が安定して住めるように……ということで作った自治区である。


だが、もとをたどれば全ての種族が分け隔てなく生きていける世界。
それを構築しようとしたのには間違いない。

ならば、その主義は最後の最後まで守る必要はある。
それはクロンのプライドであり、魔王の資格たるものである。



シェクスピア「それでこそ、我が敬愛する魔王。」


シェクスピアは膝をついてそれに答えた。
この人は何も変わっていない。
ただ、魔なるものを分け隔てなく愛する。

禁呪を追い求め、禁断の領域へと突き進むただの人間をも愛し、そして、グッゲンハイムの生命体を絶滅の危機に追いやった生命体ですら愛する。
その姿に、シェクスピアは惚れていた。
愛していた。


それこそが――――――――――――――魔王。
シェクスピアは彼を再び愛していた。
惚れなおしたと言えば、チープな言葉になる。
だが、シェクスピアは偉大なる人物であると再認識した。
それこそ、運命の出会いのような雷鳴が走ったの如く。







シェクスピア「……しかし、信じられないわね。いきなり竜がやってきたと言っても。」


シェクスピアの意見はもっともであった。
物語や絵本でしか登場しえない生命体であることは地球でもこのグッゲンハイムの大陸でも同じことである。
架空の生き物に会ったと言っても誰も信じてはくれない。



『ドラゴンが出た!!』

ということを聞いただけで誰が信じるか?
誰も信じない。

その眼で、その威圧感と存在感に触れないと誰も信じない。
それぐらい馬鹿らしい―――――ファンタジーの生命体だった。





クロン「絶滅した竜。竜王の血を飲んだ少年。竜王が持っていた秘匿の槍。あれを見て信じることができない奴は、現実を拒否している。」

シェクスピア「まあ、あそこまで行くとファンタジーだけど。」

クロン「魔法が使える時点でこの世界も十分ファンタジーだ。」

シェクスピア「ごもっとも。」

クロン「信じられないことが一遍に起きたんだ。そういう場合は全部信じるに限る。」








シェクスピア「……どうやってごまかすのよ。明日、人間の監査が入るわよ。」

一番の懸案事項は人間国家の介入である。
まだまだ竜も数も少なければ、マユルも素体が少年だ。
力を正式に発揮するのは10年後近くになるだろう。
そこまで時間を稼げとは言わないが、それでも時間は稼げるならそれに越したことはない。

明日、隣国のシュラインの監査及び税の徴収にやってくる。
半年に一回実行されるものであり、そのときに色々と調べにやってくる。





クロン「明日はしのぐ。そうすれば、ここにやってくるのは半年後だ。最近はこちらの日頃の行いもあって、ろくに監査も入っていない。ごまかせるはずだ。」

最近はシュラインのクロノス自治区査察はゆるくなっている。
というのも、クロンがかなり念入りにシュラインと友好を結んできたからだ。
そのかいもあって、よほどの問題がない限りは税の徴収をして帰っていく。





シェクスピア「……確かにね。」

クロン「その後は人間社会を含めて情勢を見極める。それからでも判断は遅くない。」

結論はこの状態を維持すること。
竜がやってきたということはそれに付随して、各地で変化が起きてもいい。
それがあるかどうかを見極めてから……と、クロンは結論を出した。

情報を集めるにしても、何をするにしても時間が必要だった。
それから判断してもいい。

ならば、しばらくの間匿う。
それがクロンが出した結論。






シェクスピア「なるほど。様子を見て、あの竜たちを売ることも考えるわけね。」

クロン「そういうことだ。」

シェクスピア「じゃあ、明日はごまかすってわけね。」

クロン「ああ。」







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こんにちは!

シェクスピアさんに竜王、役者がそろってきて、それが事件へのカウントダウンを感じさせますね。
ドラゴン登場時など、どうなるんだろうと非常にドキドキしてしまいました。友好的だったので、ホッと一安心。
魔王という立場は非常に大変そうですね。
それをこなすクロンさんはやっぱり王の器なんだなと感心してしまいました。

小説応援しています!これからも頑張ってください♪

2010/02/13 13:38 | 冬霞 [ 編集 ]


Re: タイトルなし 

コメントいつもありがとうございます。
LandMです。

確かにマユル・クロン・カレンと役者はその辺から集まってきますね。この作品は特に重要な人物以外は出していないので、それぞれが結構役回りが決まっています。……確かにクロンは王の器ですね。最初の構想段階では全然そんなことなかったんですけどね。自分としては王の器があるクロンに違和感を覚えていますが。まあ、その辺は結構変わってきてますね。

またお暇な時に立ち寄りください。
それでは~~。

2010/02/13 18:22 | LandM [ 編集 ]


 

望んでいない住民が大人しくしていればいいけど、なにか不安だ。
マユルも本当を言う気もないようだし、統治するものからしたら厄介以外の何者でもない。
住むことを許してしまったのだから、仕方ないけどなにか起こりそう。
クロンはいいな。
すごくいい。
王様らしい。

2011/12/12 19:08 | ぴゆう [ 編集 ]


ぴゆう様へ 

なんだかんだであの男はそれなりにやる気出して政治やってます。
かなり素人ですが、そのあたりが読者にも共感を呼んでいますね。
結構魔王であくどいこと考えている割には、肯定されるのはその辺だと思います。

2011/12/13 08:14 | LandM [ 編集 ]


 

随分と大きな一石ですね
波紋はどう広がるのでしょう
そして彼らはその中にいるのしょうか、それとも外から見てるのでしょうか
…また来ます

2015/08/27 23:57 | rainshot [ 編集 ]


rainshot 様へ 

確かに大きな波紋ですね。
これは。これが色々な問題になるので、楽しみ?です。
グッゲンハイムにとって、竜は意味があるものなので、これからが大変ですね。

毎度ファンタジーのコメントありがとうございます\(^o^)/
時間があるときにまたいらして下さいませ。

2015/08/28 08:53 | LandM [ 編集 ]


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