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2000/12/23 (Sat) 4話『洗礼』

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オウファン「結局……私は度胸がなかったんですよ。人間を裏切ることも。魔王を裏切ることも……。私はどちらかを選べない。私はこれでもこんな世界が好きです。人間は確かに横暴なところはありますが、それこそが姿だと思いますから……そんな人間を見るのが好きです。魔王様も敬意を称します。民族の壁をなくそうと尽力する姿は正に平和の鏡でしょう。だからこそ……ここで死ぬのが一番なんですよ……。」


そう言ったオウファンの額に爪が刺さっていた。
正解には爪が触れていた。
クロンの爪がオウファンの額にあった。

クロンは闇よりも深い闇の中で唯一手と爪だけがあった。
オウファンはそれを甘んじて受けていた。
それはさながら、魔王が行う洗礼の儀式のようにも見えた。
魔物になるための清めの儀式であった。
真実それに近かった。










クロン「ならば、お前は今日……今死んだ。これからは我のもとで働いてくれ。」

オウファン「ふ……。」

オウファンは笑った。
上手い手を使うものだと。
確かに一度死んだといえば、そこまでだ。
死んだ身で人間と魔王どちらを選ぶかと言えば……彼は魔王を選ぶ。
そこまでの心理を考えて、クロンはこのような行動にでているのである。









オウファン「一度死んだのであれば……新しい名前がほしいですね。」

クロン「考えておこう。あるいは自分で決めるのもいい。」

クロン自身はどちらでも良かった。
しかし、他人から与えられる名前よりも自分でつける名前の方がいいものだ。
少なくともクロン自身はそう思っている。
それぞれによって違う感性だと思うが。









オウファン「だったら……また、『オウファン・カラス』で。」

クロン「いいのか?」

オウファンに仮面のような微笑が戻った。
今まで笑ってはいても少しつらそうな表情をしていたオウファン。
それがいつもどおりのポーカーフェイスともとれない微笑が魔王の目の前にあった。
クロンは安堵した。

これであれば大丈夫だと。







オウファン「気に言っているんですよ、この名前は。……それに……私は魔王の味方をするわけではありません。」


オウファンが名前を変えようと言ったのは一種の酔狂な振る舞いの一つだった。
意外にもクロンは真面目に受け取ったので、オウファンは驚いた。
まったく、騙されやすい魔王閣下だ。……奥さんとそっくりだと。


結局のところ、彼はお人よしなのだ。
須らく、すべての生き物に優しい。
おおよそ憎しみという感情とは無縁の人間なのだろう。
それは一種の悟りにも似ている。
オウファンはそうした達観したクロンを羨望の目で見たいた。
それは今も昔も変わらない。








クロン「ならば、何の味方だ?」

オウファン「人間・エルフ・ダークエルフ・ワイルフ・コルボックル・ドワーフ・竜族……このグッゲンハイムに生きる者全て……言ってしまえば人類全ての味方です。」


だからこそ言う。
自分は魔王の味方ではない。
人類の味方なのだと。
それこそがクロンの望む答えだとオウファンは分かっていた。


クロン「それでいい。それだ私の知っている『オウファン・カラス』だ。魔王のためではない。人類のために私のもとで力をふるえ。」

オウファン「魔王が世界平和を望む。」

クロン「変か?」

オウファン「素晴らしいことかと。」


オウファンは平伏していた。
心の奥底から。自分は最後の最後まで魔王の忠臣である。
クロンが世界平和の望みを捨てるその日までは。

そして、その日は絶対に来ないだろう……。
それはオウファンは確信をしていた。



グッゲンハイム1905年。
オウファンの加入により、クロノス自治区は大きくうねりを見せようとしたいた。
魔王は人間すらもその傘下にいれ、人間も他の種族も全ての種族が共存できる世界へと。
その道は険しいが、それでも少しずつ進んでいる。

その確信があった。


これでいいのかと、精霊よ。

クロンは呟いた。
オウファンにも誰にも聞こえない小さな声で言った。



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人間を味方に入れるというのは反発ある
人間から迫害されたって人いるのだから
まぁそれは一部の人間だろうが

2011/03/20 09:22 | ★ハリネズミ★ [ 編集 ]


★ハリネズミ★ 様へ 

ああ、確かにそういう視点もありますよね。
魔王が抑止力になっているので、そういうこともないと思いますけど。
そういう視点で描くのも必要ですよね。
大変貴重なご意見ありがとうございます。

2011/03/21 15:17 | LandM(才条 蓮) [ 編集 ]


 

素晴らしい参謀が味方についたよね。
こういう人の価値をわからないような国に未来はないわ。

ボチボチとのんびりと続けて行きましょうよ。
それしかないものね。
わたしはLandMさんが復帰してとても嬉しいもの。

2012/02/05 14:46 | ぴゆう [ 編集 ]


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